11月18日~2021年2月26日

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Special 2019.12.16 UP

【INTER BEE CONNECTED 2019セッションレポート】「After Hours!テレビは本当に生き残れるか!?」〜5年後を見据えた本音の危機感〜

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昨年好評を得た「After Hours」セッションが今年も行われた。「InterBEE」本来の終了時間後に一杯飲みながら、テレビの未来について闊達な意見交換を狙うもので、今回も会場は満席状態。「テレビは本当に生き残れるか!?テレビはどうなる?テレビをどうする?」をテーマに、テレビの内側と外側を知る登壇者たちと会場の参加者が議論を交わした。
(テレビ業界ジャーナリスト/長谷川朋子)

「テレビはリーチしているか?」「YouTubeはテレビか?」にズバリ回答

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新ルール「忖度ボード」が導入されたが、本音の議論が続いた。

今年の「After Hours」は元日本テレビ社員でC Channelを立ち上げた三枝孝臣氏が進行役となり、パネリストには前回に引き続きテレビ東京蜷川新治郎氏、そして今回新たにNHK神原一光氏と日本テレビからLiveParkに出向中の岸遼氏、元フジテレビ社員で現在フリーのコンテンツプロデューサー高瀬敦也氏が並んだ。会場レポーター役はNHK倉又俊夫氏が務め、会場からも意見を吸い上げながら会が進められた。また「After Hours」ならではの演出もあった。本音の追求にこだわり、立場発言が強いられる場合はわかりやすく「忖度」と書かれたボードを掲げながら意見する新ルールが加わった。

全体テーマは「テレビは生き残れるのか?」というものだった。テレビを「デバイス」「コンテンツ」「ビジネスモデル」「組織」に分解し、お題をもとにパネリストが回答を繰り広げていった。

はじめのお題は「ところで、テレビコンテンツは今、リーチしているのか?」。これに対して、神原氏は「ワールドカップラグビーのような大型イベントは突発的に数字が跳ねる。それを頼りにテレビは大丈夫だと思っているところが危ないのでないか」と投げかけた。また蜷川氏は「リーチしているコンテンツはリーチしている。タイムシフトで見ている人が増えていることに注目したい」と冷静な意見を述べ、高瀬氏も「番組を知っている、知っていないという観点からみれば、圧倒的にリーチしている」と続けた。

リーチについてさらに深掘りしていき、司会の三枝氏が「では、どうやったらリーチできるのか?」と尋ねると、岸氏は「数的にはテレビコンテンツは圧倒的にリーチしていることがわかっているが、そもそもリーチが今重要なのか。コンバージョンの方がむしろ大事であり、リーチは意味がないものになっていると思う」と新たな意見を出した。これをきっかけに議論はさらに続いた。

話題はYouTubeに移り、「テレビ体験の概念が変わりつつあるなか、YouTubeはテレビか?」をお題にパネリストに意見を求めると、高瀬氏は「結論から言えばテレビ。YouTubeは能動性に見られるものだと思われていたが、レコメンド機能もあり、ザッピングもできる。“ながら視聴”の感覚に近い。生活の中心にYouTubeがあるからテレビと言える」と説明した。また神原氏は「大学生に『何のチャンネルをみているか?』と聞くと、『~さんのチャンネル』という答えが返ってきた。チャンネルの意味が変わってしまっている」と答え、岸氏は「子ども頃のメディア体験が大きく影響する。だから、今の子どもたちはYouTubeがテレビになっている」と回答。

さらに蜷川氏は「『勇者ヨシヒコ』をYouTubeでも配信したところ、1週間で2000万円のレベニューシェアを得た。実はこれを実施前に社内では反対意見も多かった。“YouTubeは敵だ”という考えがあるからだ。だが、YouTubeは入口になる。出さないことによって、僕らが機会損失を生み出してしまっている。テレビがマスでい続けるには、カスタマージャーニーを描くことが極めて重要になってくると思う」と意見を述べた。

ここで会場の参加者に「YouTubeはテレビのともだちか?敵か?」と尋ね、「敵」と回答した参加者のひとりにその理由を聞くと、「収益のスキームが広告である以上、テレビにとっても、スポンサーにとっても、YouTubeは競合相手だと思う」という答えだった。

「テレビ局はこのままだとヤバイ」「ぎりぎりアウトの状態」と警鐘を鳴らす意見

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会場の参加者と共に意見を交わし、議論を深めた。

ここまで、さまざまな意見が交わされ、本音がぶつかり合い、「忖度ボード」の出番も少なかった。そんななか、「テレビが生き残れても、テレビ局が生き残れるとは限らないのではないか?」というお題に対しても議論が深まった。高瀬氏は「何をもってテレビか。テレビ局は何で稼ぐのかということを考え、マスのノウハウや信頼のノウハウとか、生活の日常に根づいている環境といった強みを活かすべき。右往左往するべきじゃない」と意見し、蜷川氏は「コンテンツ企業になっていくことで、テレビは生き残っていけると思っている。コンテンツは世界中にも発信できる。生き残るためにどう逆手にとれるのかがポイントだ」と述べた。

また岸氏は「テレビはもう、デバイスとしてはガラケーに近い。つまり、死にいくもの。テレビ局はこのままだとヤバイと思う。テレビCM崩壊説が叫ばれ始めた10年前に入社したが、社内意識改革がどこまで進んでいるのか疑問に思うところもある。テレビは作っていて楽しいから、まだまだいけるかもと思いがち。それによって危機感が薄れ、実情がみえにくい。現実を直視している人が少ない」と苦言を呈した。

ふたたび会場の参加者にも耳を傾けた。「地方のテレビ局は地方の情報を提供している。生き残ってもらわないといけないものだと思われている節がある。だから、テレビ局が危機感を持っているかどうかわかりにくい」という意見や、「時代が変わっているのになかなか意識が変わっていかない。テレビ局が作るコンテンツは生き残れるだろうが、テレビ局が生き残れるかどうかは、生き残らせてもらえる努力をどれだけできるかにかかる。情報を集め、考え、番組を作ることができない局は生き残れないと思う」という意見もあり、共感を得ていた。

こんな攻めたお題もあった。「有料テレビとTikTokだけあればいい?」。岸氏が「10代の女性にとっては有料テレビとTikTokだけあればいいとも言える。分散型コミュニティの時代は、コミュニティによって答えが異なるので全体的な話をしても仕方がない。それぞれのクラスターごとに考えていかないといけない」と真っ先に回答すると、これに対して高瀬氏は「テレビエンターテイメントは国益に直結する。世の中がマスを求めない時代に突入し、抗いたくもなる」と意見した。また蜷川氏は「共通でモノをみる基準値がなくなってしまうと、世の中の基準をどう置いていくべきか」と疑問を投げると、神原氏が「ペルソナは何を設定しているのか?といった拠り所が大事になってくるのではないか」と答えた。

そして、最後のお題は「5年後、テレビは踏みとどまるのか?」。可能性を探った意見が並び、岸氏は「メディア、デバイスとしてのテレビは終わっているが、コンテンツとしてはうまくコンバートしていけば、可能性がある」と答え、蜷川氏「5年後どうなっていたいかをテレビ局にいる全員が考えていくと、広告代理店との関係値も変わっていくだろう。代替えできることは代替えし、クリエイティなことにお金を使い、エコシステムを部分的に作れるかどうかにかかっている」と述べた。また高瀬氏は「テレビはいくらでもまだ稼げる。稼げないわけがない。じゃあ、どうすればいいのか。本気で外に目を向けないといけない。今はぎりぎりアウトの状態。このままだと危ない」と、警鐘を鳴らした。

司会の三枝はこれまでの議論を総括し、「テレビはメディア力があるけれど、使い切れていない。バブル世代にしがみつく感覚を捨て、この状況がわからないとチャンスが活かせない時代にいよいよ突入した」とまとめた。そして、最後に神原氏が「5年後は放送開始100年目の年にあたる。皆さんと共にその瞬間を迎えたい」と呼びかけ、締めくくった。

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